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人づくりは「環境」が鍵を握る/組織開発のアプローチ

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

2023年6月23日(金)、24日(土)の2日間にわたり、第25回医療マネジメント学会がパシフィコ横浜で開催されました。

ミライバは、24日(土)のランチョンセミナーで、海老名総合病院の服部院長を座長に迎え、「病院における「組織学習」の可能性と実践方法」をテーマに、「病院としてリーダーを育成する方法」について講演しました。参加していただいた皆様、誠にありがとうございました。

アンケートの結果、「まさに当院で必要とされる内容だ」という声や、「研修の方法を見直したい」という意見など、多くのご感想をいただきました。
そのため、ミライバでは、チャンネル(https://nkgr.co.jp/useful/hospital-organization-100638/)において、同じ内容の動画を収録し、8月を目処に公開する予定です。また、セミナーで対応できなかったご質問についても、今後の記事(Vol.11以降)で一つずつ解説していきますので、ぜひご覧ください。

さて、今回の内容は、医療マネジメント学会で話した中で特に反響の大きかったポイントについて説明いたします。それは、人材の質は「環境要因」によって大きく左右されるということです。

「環境」がもたらす影響を正しく認識する

私たちは、無意識のうちに自身が身を置く環境に影響を受けています。例えば、生活する国や地域、通った学校、勤務する組織などです。京都にいればその雰囲気を感じ、大阪にいれば別の雰囲気を感じるものです。人はその地域性に影響を受け、生活スタイルや思考、言動の習慣を形成します。また、同じ地域でも神社やお寺に行くと、そこに特有の雰囲気があり、その空間を訪れる方や勤務している方々のマインドは神聖な感覚や感性が開かれると言えます。環境は特定の場所で固有の雰囲気を形成し、私たち人間の内面や言動、振る舞いに影響を及ぼしているのです。

同様に、組織にも独自の雰囲気が存在します。私はこれまで全国の約150の病院で組織づくりや人材育成のサポートをしてきましたが、病院ごとに雰囲気は異なります。そしてその雰囲気は、そこで働く人々の心情、言動、サービスの品質、能力開発の速度に大きな影響を与えるのです。「組織が醸し出す雰囲気が人材の質に反映される」という点を、経営者や幹部はしっかりと認識しておくことが重要です。

適切な環境を整備する

このように考えると、組織の雰囲気を作り上げる「環境」を適切なものにすることが、経営者や幹部に求められる課題となります。

では、どのようにして適切な環境を整備するのでしょうか?

まず第一に、トップの想いの言語化が求められます。経営者や幹部は、「私たちがどのような組織を築きたいのか」という考え方を明確にし、それを言葉にして全体に伝える必要があります。環境は、トップの意志に基づいて形成されるものです。年度方針やビジョンといったものにおいて、創り出していきたい組織の姿を明確に示すことが必要です。ただし、既存のビジョンを使用するだけでは十分ではありません。経営者や幹部が「まさにこれを実現したい」と心から信じることが重要です。環境は、見えない想いが出発点となることを忘れずにください。また、部門の責任者も同じことが言えます。各管理職が自身が作りたいチームのイメージを言葉にし、部門やセクションの方針として掲げることが、チーム作りの重要なステップとなります。

第二に、一貫した態度でトップや幹部が言葉に基づいた行動を示し続けることが求められます。組織全体にトップの思いを浸透させるためには、その思いを具体的な言葉にして発信し続け、組織に浸透させる必要があります。思いを言葉だけで終わらせず、「組織文化」として定着させるためには、トップや幹部がその言葉そのものとなり、言葉に基づく姿勢を貫くことが必要です。定期的に「私たちが築きたい組織の理念」を発信し続けたり、自身が模範となる姿勢を示したりすることで、理想とする環境を具現化することができます。

第三に、言葉を組織構造に落とし込んでいくことが求められます。例えばそれは、クレドのような法人の信条をまとめた小手帳であったり、人事制度などのルールであったり、リーダーシップ研修という場であったりします。トップや幹部が、全職員に直接的に働きかけ続けることには限界があります。そのため、ツールや場という機会をうまく利用して、トップの想いを職員一人一人の頭、心、魂に響かせていくことがポイントになります。制度や研修の場といった組織構造は、想いを伝え、風土を醸成していくための手段といえるでしょう。

人の多様な価値観、考え方を統一させていく

人にはそれぞれ固有の価値観、考え方があります。たくさんの人が集う組織は、何もしなければバラバラになってしまうということです。

良き組織には「共通の目的意識」と「協働精神」が宿っています。そうでない組織は、向いている方向がバラバラで対立が生まれています。

この違いを生ませるものは「環境」です。そしてその環境は、「創り出したい組織の状態を言語にした方針」、その方針に一貫した「リーダーの言霊と姿勢」と「制度や研修という機会」の3つの要件が揃っていることとなります。

生産労働人口が減少し、リーダー候補者も限られ、さらには価値観や考え方が擦り合うことが難しくなった現代において、人材育成と組織づくりに向き合うことは、病院経営の持続性、発展に向けて欠かせないテーマとなっています。時間を要するものではありますが、環境づくりに向けた一歩に踏み込んでみられてはいかがでしょうか?

病院幹部のための組織開発講座第10弾
『人材育成の鍵を解き明かす!病院成長のための戦略と手法』

組織というアプローチ

本稿の執筆者

江畑直樹(えばた なおき)
株式会社ミライバ 取締役

2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事。2018年に株式会社ミライバを設立し、組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。成人発達理論、学習する組織、U理論、インテグラル理論、NVC等の理論をベースとし、首都大学東京専門職大学院や日本社会事業大学専門職大学院では、これら理論を軸とした組織創りやサービス開発等について看護管理者、福祉管理者を対象に授業を行う。

株式会社ミライバ/株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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